水郷の風景と鹿行の実り ― 潮来のあやめ舟から行方・鉾田の畑まで

水路を行き交う小舟と、見渡す限りの畑。鹿行地域には、水の恵みと土の恵み、2つの豊かさが息づいています。
潮来市を中心とする水郷地帯は、柳川(福岡県)・近江八幡(滋賀県)と並んで「日本三大水郷」の一つに数えられます。水路を行き交う舟と、初夏に咲き誇るあやめが、独特の風景をつくってきました。
一方、内陸に目を向ければ、行方市のさつまいも畑や鉾田市のメロン畑が広がります。同じ鹿行地域の中で、水と土、それぞれの恵みがどう育まれてきたのかをたどります。
潮来の十二橋めぐり:水路の風景を残す舟旅
水郷潮来あやめまつり:ビール瓶の花からの出発
昭和27年、愛好家の集いから発展
水郷潮来あやめまつりは昭和27年(1952)、愛好家たちがビール瓶などに花菖蒲やあやめの切り花を生けて楽しんだのが始まりとされます。現在ではあやめ園に約500種・100万株が植えられ、例年5月下旬から6月下旬(見頃は6月10日頃)に開催され、期間中はおよそ80万人が訪れる地域最大級の祭りに成長しました。1960年には潮来の水郷風景を歌った「潮来花嫁さん」がヒットし、歌手・花村菊江の紅白初出場曲にもなっています。
行方のさつまいも:「かんしょ課」がある町
行方かんしょ、GI登録と天皇杯受賞
行方市は栽培面積・生産量ともに全国2位を誇るさつまいもの大産地です。ブランド化のため市役所には全国的にも珍しい「さつまいも課」が設置され、「行方かんしょ」は地理的表示(GI)保護制度に登録されているほか、農林水産祭の最高賞である天皇杯も受賞しています。年間の出荷量はおよそ2万トンにのぼるとされます。
出典:行方かんしょ | 地理的表示(GI)保護制度 登録産品情報いばらきの“さつまいも”特集2025 | 茨城県天皇杯受賞について | JAなめがた甘藷部会連絡会
鉾田のメロン:プリンスメロンからイバラキングまで
茨城県は生産量日本一が27年連続
鉾田市を中心とする茨城県は、メロン生産量で27年連続日本一を誇ります(2020年代半ば時点)。産地化の起点は昭和37年(1962)、旧・旭村(現・鉾田市旭地区)と八千代町にプリンスメロンが導入されたことにさかのぼります。近年は約4万個体から選び抜いた母親メロンと400通り以上の掛け合わせを経て開発された高級アールス系メロン「イバラキング」も登場し、鉾田市は市町村別農業産出額の野菜部門で全国1位を記録しています。
よくある質問
「水郷」は潮来だけを指す言葉?
隣接する千葉県香取市の佐原も同じ利根川下流域の水郷として知られますが、「日本三大水郷」に数えられるのは潮来・柳川・近江八幡の3つで、佐原は含まれません。とはいえ両者は近接し、「水郷佐原あやめパーク」のように観光の連携も見られます。
あやめ・しょうぶ・かきつばたは何が違う?
植物としては別種で、開花期や花の模様で見分けられます。あやめまつりの名前には「あやめ」とありますが、実際に園内に多く植えられ見頃を彩るのは花菖蒲で、地域では古くからこれらをまとめて「あやめ」と呼び親しんできました。