諏訪湖の水はどこから来て、どこへ行くのか

諏訪湖は湖ひとつでは完結しない、大きな水の通り道の途中にあります。
諏訪湖は長野県最大の湖ですが、面積13.3平方キロメートルに対して流域面積は531.2平方キロメートル、実に約40倍にのぼります。湖に流れ込む31の河川と、そこから流れ出るただ一本の天竜川まで含めて考えると、諏訪湖は湖単体ではなく、山地の雨から始まる一つの水系の途中にある器だとわかります。
御神渡りの信仰的な意味づけや高原の観光案内はここでは扱わず、水の量・流れ・水質という切り口から、この水系が暮らしや生きものとどう結びついているかを見ていきます。
諏訪湖という器―数字で見る湖と流域
湖面積13.3平方キロメートルに対し、流域面積はその約40倍。諏訪湖は広い山地から水を集める、流域の出口にあたります。
諏訪湖の面積と水深
諏訪湖の面積は13.3平方キロメートルで、長野県内最大の湖です。全周は約16キロメートルあり、一周サイクリングのコースにもなっています。平均水深は4.7メートル、最大水深でも7.2メートルと、面積の割に浅い湖であることも特徴で、この浅さが水質の変化を受けやすい体質にもつながっています。
流域面積と31の流入河川
諏訪湖に水を集める流域の面積は531.2平方キロメートルで、湖面積13.3平方キロメートルのおよそ40倍にあたります。この流域には八ヶ岳や入笠山、車山、鉢伏山などの山々が含まれ、そこに降った雨や雪解け水が31の河川となって諏訪湖へ流れ込みます。湖の水質は、湖そのものだけでなく、この広い流域全体の状態に左右されます。
出典:諏訪湖の特徴編
出口はただ一本、天竜川
31の河川が流れ込む諏訪湖ですが、そこから流れ出る川はただ一本、天竜川だけです。山地に降った雨は河川を通じて諏訪湖に集まり、天竜川となって下流へ流れ、最終的には遠州灘に至ります。入り口は多いのに出口は一つという構造が、諏訪湖を流域全体の合流点にしています。
滞留時間39日
県の湖沼諸元によれば、諏訪湖の水の滞留時間は39日とされています。31の河川から絶えず水が流れ込み、天竜川へ絶えず流れ出ているにもかかわらず、湖全体の水が入れ替わるにはひと月あまりを要する計算です。この滞留時間の長さが、流れ込んだ汚れが薄まりきる前に湖内へとどまりやすい一因にもなっています。
治水と水質保全の歩み
1979年の下水道整備を境に水質指標は大きく改善しましたが、窒素やヒシなどの課題は今も残っています。
1986年・指定湖沼
諏訪湖は1986年11月に指定湖沼となり、これを受けて水質保全計画が策定されました。指定湖沼とは、水質の悪化が進みやすく計画的な対策が必要と国から位置づけられた湖沼のことで、諏訪湖のように流域が広く浅い湖は、汚れが蓄積しやすいためにこうした指定を受けやすい条件を備えています。
1979年・流域下水道の稼働
諏訪湖流域下水道は1979年に利用が始まり、その後、水質を示す指標は大きく改善しました。生活排水がそのまま川や湖に入っていた状態から、下水道を通じて処理される仕組みへ切り替わったことが、湖全体の水質を動かす転機になったことを示しています。設備という一つの投資が、流域全体の水の質を変えた例です。
出典:諏訪湖の特徴編
今も残る課題―COD・窒素・ヒシ・貧酸素
下水道整備で水質は改善しましたが、諏訪湖の浄化対策を伝える資料は、化学的酸素要求量(COD)や窒素、ヒシの繁茂、水中の酸素不足(貧酸素)を今も残る課題として挙げています。一度大きく改善した水質でも、浅く滞留時間の長い湖では、新しい形の負荷にさらされ続けることがわかります。
出典:諏訪湖の浄化対策
湖に生きる季節の営み
ヒシの茂りと刈り取り、冬の結氷という季節の変化が、湖の管理と観察の対象になっています。
ヒシの季節サイクルと刈り取り船
ヒシは6月から7月にかけて湖岸を覆うように広がり、夏に繁茂域が最も広くなったあと、7月後半から8月にかけて刈り取られ、10月後半には枯れていきます。増えすぎたヒシは水中の酸素不足を助長するため、2012年の試験を経て2013年からヒシ刈り取り船が本格稼働しており、湖の生態系は放置されているのではなく、観測と作業を通じて手入れされ続けています。
諏訪湖の結氷と氷の尾根
諏訪湖が全面結氷したあと、氷点下の冷え込みが数日続くと氷が裂けて盛り上がり、高さ30センチメートルから1.8メートルほどの氷の尾根ができることが県の資料に記されています。この現象は御神渡りと呼ばれ、宮司らによる拝観を経て発生が公表されますが、直近の記録は2018年です。ここでは信仰上の意味づけには立ち入らず、湖が完全に結氷するほど冷え込んだ年の記録として押さえておきます。
出典:諏訪湖の御神渡り
よくある質問
諏訪湖の水はどこから来て、どこへ流れていくの?
入り口の数と出口の数が極端に違う地形である。三十本を超える流れが集まってくる一方、外へ出ていく道は天竜川一本のみで、遠州灘まで注ぐ。この非対称さこそが、諏訪湖を流域全体の合流点にしている理由である。
諏訪湖はなぜ水質が変化しやすいの?
面積に対して流域が約40倍と広く、しかも平均水深4.7メートルと浅いため、流域からの負荷を受けやすく、滞留時間も39日と長めで汚れがとどまりやすい構造になっています。
水質はもう改善しないままなの?
1979年の下水道稼働以降、指標は大きく改善しました。ただしCODや窒素、ヒシの繁茂、貧酸素といった課題は今も観測されており、改善と課題の両方が続いています。
御神渡りは毎年見られるの?
氷点下の冷え込みが数日続くという条件が必要なため、毎年観測されるわけではありません。県の資料が示す直近の記録は2018年です。