長野県の地名索引 ── 読みと所在地を北信・東信・中信・南信でつなぐ

同じ読みの断片が、長野県内の離れた市町村で繰り返し現れることがある。読みを地図の位置と結びつけると、暗記は少しずつ手がかりに変わっていく。
長野県は北信・東信・中信・南信という四つの地域区分で語られることが多い。難読地名もこの区分に沿って眺めると、読みの手がかりが地図の位置と結びついて見えてくる。
ここでは日本郵便の郵便番号データと国土地理院の地名情報にもとづく公式読みをもとに、地域区分ごとに主要な町域を並べた。読みにくさの順位づけや、確認できない由来の紹介はしない。
北信 ── 長野市を中心に千曲川がつくる盆地
篠ノ井有旅しののいうたび
長野市南部、篠ノ井地区に属する町域で、読みは「しののいうたび」。「篠ノ井」だけでも読みにくいうえに「有旅」が続き、県内でも指折りの長さを持つ地名として知られる。篠ノ井はかつて篠ノ井市という独立した市であり、長野市に編入された後も南北信を結ぶ鉄道の要衝であり続けている。
安茂里あもり
長野市街地の西、裾花川沿いに広がる地区で、読みは「あもり」。三字を一息に縮めて読む点は、同じ長野市内の「檀田」などとも重なる北信の傾向のひとつである。長野市中心部からは犀川を挟んですぐ西にあたる。
檀田まゆみだ
長野市南部、篠ノ井に近い町域で、読みは「まゆみだ」。「檀」は「だん」と音読みされることが多い字だが、ここでは弓の材に使われる植物「真弓(まゆみ)」を指す訓を用いる。同じ字の音読みに引っぱられると届かない読み方。
妻科つましな
長野市役所にもほど近い町域で、読みは「つましな」。「科」を「しな」と読む例は中信・南信にも点在し、安曇野市の明科・豊科、飯田市の駄科などと同じ読み筋にあたる。北信・中信・南信の三地域にまたがって分布する読みとして、地図に位置づけられる。
杭瀬下くいせけ
長野市の南に隣接する千曲市の町域で、読みは「くいせけ」。「下」を「げ」ではなく「け」と読む点が特徴で、千曲川沿いの低地を指す地名と重なる。長野盆地の南の入り口にあたる位置を示す一例。
東信 ── 佐久・上田・軽井沢を結ぶ高原の町域
岩村田いわむらだ
佐久市の中心市街地にあたる町域で、読みは「いわむらだ」。江戸時代には内藤氏を藩主とする岩村田藩の陣屋が置かれた地区で、現在も佐久市の行政・商業の中心にあたる。読み自体は字面に近いが、佐久盆地の位置を覚える起点になる。
塩名田しおなだ
佐久市南部、千曲川沿いの町域で、読みは「しおなだ」。「名田」の部分を「なだ」とひとまとめに読む点が、同じ佐久市内の岩村田の「むらだ」と並ぶ読みの傾向を示す。中山道の宿場が置かれた、川沿いの低地にあたる。
御嶽堂みたけどう
上田市南部の町域で、読みは「みたけどう」。「御嶽」は木曽の御嶽山(おんたけさん)で「おんたけ」と読み慣れている人が多いため、同じ字の並びが上田市では「みたけ」になる点に戸惑いやすい。上田市中心部からは南東にあたる。
本海野もとうんの
上田市の東寄り、東御市との境に近い町域で、読みは「もとうんの」。「海野」を「うんの」と読む慣習は、隣接する東御市の海野宿(うんのじゅく、北国街道の宿場町として知られる)にも共通し、東信のこの一帯に広がる読みである。
発地ほっち
軽井沢町南部の町域で、読みは「ほっち」。「発」を促音を伴って「ほっ」と読む例で、軽井沢の中心部(旧軽井沢)からは離れた、町の南側に位置する。佐久地域と軽井沢を結ぶ位置にある町域のひとつ。
中信 ── 松本・安曇野・木曽をつなぐ谷筋
明科七貴あかしなななき
安曇野市北部の町域で、読みは「あかしなななき」。「科」を「しな」と読むのは、北信の「妻科」や南信の「駄科」にも通じる県内共通の読み筋で、中信ではこの「明科」がもっとも知られた例にあたる。篠ノ井線の駅名にもなっている。
豊科高家とよしなたきべ
安曇野市中部の町域で、読みは「とよしなたきべ」。「豊科」もまた「しな」と読む地名で、同じ安曇野市内の明科と読み筋を共有する。「高家」を「たきべ」と読む部分は、「高」の読みが大きく縮む点が特徴。
桟敷さじき
塩尻市北部の町域で、読みは「さじき」。芝居見物の観覧席を指す日常語「桟敷」と同じ読みで、この地名の場合は読み自体に迷いは少ないが、「桟」の字を「さ」とだけ読む点は他の熟語ではあまり見かけない。松本盆地の南端、塩尻市街地の北にあたる。
田立ただち
木曽谷南端、南木曽町の町域で、読みは「ただち」。「立」を「たち」ではなく濁らせて「だち」と読み、木曽路の宿場が連なる谷筋の南のはずれに位置する。中信の中でも岐阜県境にもっとも近い一角にあたる。
麻お
松本と長野のほぼ中間、善光寺街道の宿場町として栄えた麻績村の中心地名で、読みは「お」。一字だけの地名を一拍で読ませる例は県内でも数少なく、村名の「麻績(おみ)」とあわせて覚えると、地図上の位置も一緒に定着する。
南信 ── 諏訪・伊那・飯田をつなぐ谷筋
駄科だしな
飯田市北部の町域で、読みは「だしな」。「科」を「しな」と読む筋は北信の「妻科」、中信の「明科」「豊科」と同じで、この読みが北信・中信・南信の三地域にまたがって分布することを示す例になる。飯田市の中心街からは北寄りに位置する。
座光寺ざこうじ
飯田市北端、松川に近い町域で、読みは「ざこうじ」。「光寺」の部分を「こうじ」とひとつなぎに読む点に注意がいる。飯田市の中でも天竜川と松川の合流点に近い、盆地の縁にあたる位置を占める。
樋橋とよはし
諏訪湖の北岸、下諏訪町の町域で、読みは「とよはし」。愛知県豊橋市と同じ読みでありながら漢字がまったく異なり、読みが先に立つ地域と、漢字が先に立つ地域があることを示す一例になる。中山道と甲州道中が合流する宿場町の一角。
乙事おっこと
諏訪盆地の南、富士見町の町域で、読みは「おっこと」。「乙」を促音を伴って「おっ」と読み、八ヶ岳山麓の高原地帯に位置する。諏訪地域から伊那谷へ抜ける手前、県境に近い一角にあたる。
清内路せいないじ
伊那谷の南西、阿智村の町域で、読みは「せいないじ」。「路」を「じ」と読む点に注意がいる。旧清内路村は2009年に阿智村と合併しており、中山道の脇往還として木曽と伊那谷を結んだ峠道沿いに位置する。
よくある質問
北信・東信・中信・南信とは、どのような区分ですか。
長野県内で日常的に使われる地域区分で、地形や交通の結びつきに沿って北信(長野盆地)、東信(佐久・上田)、中信(松本・安曇野・木曽)、南信(諏訪・伊那・飯田)に大きく分けたものである。天気予報や行政資料でも広く使われる呼び方である。
同じ読み方の断片が複数の市町村にまたがるのはなぜですか。
単一の理由を資料から確認することはできないが、「科(しな)」のように同じ読みが北信・中信・南信にまたがって観察できる例はある。この記事ではその分布を地図の手がかりとして示すにとどめる。
この記事は、難読地名の一覧やランキングとは違うのですか。
違う。読みにくさの度合いを比べて順位をつけることはせず、読みと所在地を結びつけて地図の中に位置づけることを目的にしている。
ここに載っていない町域の読みを確認するには。
各項目に添えた出典で確認できる。北信・東信・中信・南信のどこに属するかをあわせて調べておくと、次に地図を見るときの手がかりになる。