県西の地名をたどる ── 由来がわかる名前、わからない名前

難読地名検定で出会う地名の中には、由来が資料からたどれるものと、読みだけが伝わり由来は確認できないものがある。ここでは九つの地名を選び、両者を分けて示す。
難読地名検定・県西編には、古河市・結城市・下妻市・常総市・筑西市・坂東市・桜川市・八千代町・境町の120の地名が登場する。読みを覚えるだけでなく、その土地の由来を知りたくなる名前も少なくない。
ここでは各tierから九つの地名を選び、由来が確認できるものにはその根拠を示し、確認できないものは推測を書かず「わからない」と明記する。この地域の地名すべてに由来の記録が残っているわけではない、という前提そのものも書き留めておく。
古河・結城 ── 城下町と絹の産地に近い北西部
女沼おなぬま
古河市の地名で「おなぬま」と読む。「女」を「おな」と読む点が見分けどころだが、名の由来を示す資料は見当たらず、確認できない。「沼」は低湿地に多い地名要素で、鬼怒川・渡良瀬川の沖積地に位置する古河市らしい地形由来の可能性はあるが、これも推測の域を出ない。
七五三場しめば
結城市の地名で「しめば」と読む。鎌倉初期以来「志目波(しめは)」という郷名があり、天正18年(1590年)の豊臣秀吉から山川晴重宛の宛行状にも「志めは」と記されている。この郷名が縁起の良い漢字「七五三場」に書き換えられたのは江戸時代初め頃とされるが、書き換えの経緯そのものを示す記録は見つかっていない。
下妻・常総 ── 鬼怒川・小貝川がつくる低地
高道祖たかさい
下妻市の地名で「たかさい」と読む。小貝川からも見て高台にあたる一帯に道祖神を祀る高道祖神社があり、その高台の道祖神という位置づけが地名になったと考えられている。「道祖」を「さい」と読むのは、全国の道祖神関連地名にも見られる古い読み筋とされる。1954年まで筑波郡高道祖村として独立した自治体だった。
鬼怒きぬ
下妻市の地名で「きぬ」と読み、県西を流れる鬼怒川に由来する地名と見られる。鬼怒川はもともと「毛野川(けのがわ)」と呼ばれ、中世から近世にかけては「衣川」「絹川」とも表記され、「鬼怒川」という表記が定着したのは明治初期以降とされる。地名の「鬼怒」は、川の名の変遷とは別に、この読みのまま残っている。
水海道みつかいどう
常総市の地名で「みつかいどう」と読み、2006年まではこの地名を冠した水海道市が存在した。由来には諸説あり、坂上田村麻呂がこの地で馬に水を飲ませたという「水飼戸(みつかへと)」の伝承のほか、16世紀の文書に見える「水かへと」という古い表記、「御津海道」という別称も伝わる。いずれも水運や水とのかかわりを示す説で、単一の確定した由来があるわけではない。
収納谷すのうや
常総市の地名で「すのうや」と読む。「収納」を「すのう」と読む点が難読の核だが、由来を示す資料は見当たらない。「谷(や)」は低地や谷戸を指す地名要素として鬼怒川・小貝川沿いの地域に多く見られ、この地名も同様の低地地形と関わる可能性はあるが、確証はない。
筑西・坂東・境 ── 猿島・真壁の新田と街道
莚打むしろうち
坂東市の地名で「むしろうち」と読む。「莚」は藁を編んだ敷物を指す語で、地名の由来を示す資料は見当たらないが、字面から生活道具にまつわる地名であることだけは確認できる。坂東市は「坂東」という古来の関東の呼称を市名に採った市で、2005年に岩井市と猿島町が合併して発足した。
久地楽くじら
筑西市の地名で「くじら」と読む。「久地楽」という漢字表記から読みを組み立てることは難しく、由来を示す資料も見当たらない。読みだけを取り出せば海の生き物「鯨」と同じ音になるが、内陸の筑西市にその生き物との関わりを示す記録はなく、単なる音の一致にとどまる。
志鳥しとり
境町の地名で「しとり」と読む。1889年の町村制施行に伴い、旧・志鳥村は塚崎村・横塚村・稲尾村と合併して猿島郡静村となり、後の町村再編を経て現在の境町の一部になった。合併以前に独立した村として存在した記録は残るが、「志鳥」という名そのものの由来を示す資料は確認できない。
よくある質問
由来が確認できる地名と、確認できない地名の違いは何ですか。
公的な記録や資料に地名の成り立ちを示す記述があるかどうかである。「高道祖」「水海道」「七五三場」「鬼怒」「志鳥」は歴史的な記録や地形との関わりを示す資料があるが、「女沼」「収納谷」「莚打」「久地楽」は読みの記録以上の由来を示す資料が見当たらなかった。
由来が確認できない地名について、推測で由来を書かないのはなぜですか。
確認できない由来を断定的に書くと、事実であるかのような誤解を招く。この記事では出典で確認できる範囲を示し、それ以上は「わからない」と明記する方針をとっている。
この記事に載っている地名は、難読地名検定のどこに出てきますか。
中級(tier2)・上級(tier3)・超難問(tier4)のいずれかに、実際の出題として登場する。読みを確認したら、検定で確かめられる。
ここに載っていない地名の由来を調べるには。
各項目に添えた出典が確認の手がかりになる。ここに挙げた以外にも、由来が資料からたどれる地名・たどれない地名の両方が県西には数多くある。